傘の漢字、中にいるのは「人」じゃない!
~傘の漢字と骨の意外な関係(前編)
傘の漢字になるまでの由来
普段何気なく使っている「傘」という漢字。 よく観察すると、中に漢字の「人」が4つあるように見えます。 そのことから、「人が4人も入れるなんて、昔は随分大きな傘もあったのだな」と思う人がいるかも。 けれども、それは間違い。 これは4人の人を表しているのではないのです。
では、いったい何か? その答えの前に、少しだけ傘の漢字のルーツをたどってみましょう。 発祥の地の中国では、元々は傘ではなく、「繖」という漢字が使われていたようです。 使用されていたのは後漢(25年~220年)までということですから、今かおよそ1800年以上も前の時代。 「糸」を編んだ布製の傘が、降ってくる雨を「散」らして防ぐ様子が読み取れて、まさにピッタリの漢字です。 ちなみに音読みは「散」と同じ「サン」。 傘の音読みが「サン」なのは、旧字に由来があるのです。
雨粒が流れる説もあるよ!
その後、後漢に続く六朝時代(229年~589年)に、俗字として「傘」が使われるようになったと伝えられています。 「人」は生地、「十」は中棒に見立てることができ、見るからに傘と分かる象形文字です。 しかし、ここで疑問が浮かびます。 中にある4つの「人」は何かという問題です。
実は、これには諸説があります。 例えば、生地をつたって流れ落ちる雨粒を表しているという説。 水の筋のようにも見え、これは一理ありそうです。 あるいは、傘の模様であったり、生地のしわを表現しているといった説もあります。 言われてみれば、そんな見方もできるかもしれません。 いずれも雨の日に差している傘を外側から見た場合の解釈です。
有力なのは「傘骨説」
そして、もう一つ説があります。 それが、「傘骨」を表しているというものです。 ご自身がお持ちの傘を内側から見てください。 傘生地が張られている「親骨」と言われるパーツと、その親骨を中棒に突っ張る形で支える「受骨」と呼ばれるパーツの2種類が見て取れるでしょう。 そうした親骨と受骨の構造を「人」という漢字を4つ用いて、見事に表しているとは思いませんか? 諸説ある中で、この“傘骨説”が有力視されているのは、象形文字として、傘そのものの構造を表しているという理由に納得感があるからでしょう。