小宮商店 KOMIYA SHOTEN

「綺麗な形の傘を作りたい。」
〜職人が理想とする傘の形とは

こんにちは!
小宮商店でブランディングやウェブ制作、商品企画などをやっている折田です。
小宮商店には80才代の大ベテランから20代の若手まで、個性豊かなメンバーがいます。
そんな方々との普段の会話の一部をご紹介することで、
私たちの傘づくりへのこだわりを少しでもお伝えできればと思います。

今日は若手職人・宮戸に職人ならではのこだわりについて聞いてみました。
工房で毎日傘と向き合い続け、培ってきた“理想の形”を語っていただきました。

INTERVIEW
職人・宮戸小百合

“職人としては
生地のデザインよりも
形にこだわります。”

傘職人

宮戸さんは傘職人として、どんな時にやりがいを感じますか?

私が一番達成感を感じるのは、理想的な8本骨の長傘を作れた時ですね。

そうなんですね。
僕も8本骨の長傘には思い入れがあるので、詳しく聞かせてください。

8本骨の傘は16本骨とか12本骨に比べて生地の面が広くて、特に職人の腕の見せ所なんです。
16本骨とか骨が多い傘は骨組みの段階である程度傘の形が完成していますが、
8本骨のコマの面は広いので、最終的な傘の形は職人の腕にかかっている部分が大きいです。

職人さんは傘の形にこだわりますよね。
宮戸さんにとって理想的な8本骨の長傘ってどんな傘ですか?

そうですね。
やっぱり綺麗な形の傘を作りたいです。
職人としては生地のデザインよりも、やっぱり形にこだわりますね。
ベラ※1が出ないようにしながら、理想とする谷落ち※2や、クリ※3がある傘を張れると、すごい達成感を感じます。
そういう傘を張れると、我ながら「いい傘だなあ」と思って、しばらく眺めてしまいますね。
※1 ベラとは必要以上のたるみのこと
※2 谷落ちとは骨と骨の間のへこみ具合のこと
※3 クリとはコマの底辺の曲線のこと

傘 甲州織 小宮商店

理想とする谷落ちがあるんですね。

そうですね。
言葉で説明するのは難しいですが、張りすぎず、程よい谷落ちです。
谷落ちしすぎも良くないですが、ある程度谷落ちしていた方が、傘を開けやすいですし、
程よく谷落ちしている傘はとても綺麗だと思います。
裁断型の上の方を広げる感じです。
※傘生地を裁断する際に使う木型のこと。 二等曲線の三角型は二つの異なる曲線の組み合わせにより、立体的な曲線の美しさが表現できるよう設計されています。 また、谷落ちは雨水がころがり易い傾斜の曲線になっています。

“クリが綺麗な傘には
クラシックな美しさが
あります。”

クリの形も型で決まるんですか?

そうですね。
クリの形は二辺の長さで決まります。

綺麗なクリは8本骨の長傘にとって大事ですよね。
クリに関してはどんなところにこだわっているんですか?

まず傘として無理がないような張り具合を大切にしています。
その上で綺麗なクリが出るように型の丈を調整しています。

なんでクリがあった方が傘として美しいんでしょう?
僕もよく考えるんですが…

クリが綺麗な傘はクラシックな美しさがありますよね。
洋傘は昔、日本では「こうもり傘」とも呼ばれていて、
コウモリの羽のような形が洋傘の伝統的な形なんじゃないかと思います。

昔のヨーロッパの紳士が持っていそうな傘ですよね。
8本骨の長傘は王道だけど、クラシックな洋傘のかっこよさを出せる傘ですよね。

王道なんですが、綺麗に作るのが難しいです。
技術と経験が必要だと思います。
16本骨とかの方が複雑で難しそうに感じる人も多いかもしれませんが、
実は8本骨の方が綺麗に作るのが難しいと思います。

雨の日に街を歩く人の傘の形を見るんですけど、
クリがしっかりあって綺麗な傘は結構ありますよね。

私も綺麗な傘を見ると、どこの傘だろうと思って気になります。
一般的な傘生地は張りやすそうだなと思って見たりします。

そうなんですか?

私たちが張っている甲州織のようなしっかりした織物の生地を綺麗に張るには技術と経験が必要だと思います。
生地が分厚いと張る時に無理やり形を作ることができないので、
裁断型の調整で無理がなく、綺麗な形の傘になるようにします。
型づくりが大事ですね。
甲州織の生地はミシン縫いも難しいです。

傘職人

“型づくりは
一番大事なので、
時間をかけます。”

社内でよく職人さんたちが型について議論しているところを見かけます。

そうですね。
型はそれぞれの職人のこだわりが一番出るところなので。
8本骨の傘を作る時は特に型作りをしっかりやりますね。
骨と生地のバランスが大事なんです。
例えばこの生地は伸びにくいなと感じたら型の丈を長くしたり、生地によって微妙な調整をします。
8本骨でも違う骨であればまた調整するし。
一番大事なところなので、時間かけますね。

型作りは奥が深そうですね。

そうですね。
傘の形や使いやすさなど、型作りでかなりの部分が決まってしまうので。
8割くらい型で決まってしまいますね。
最終的な形を予測して型を調整して、上手くいくと達成感がありますね。

今の小宮商店の傘では、どの傘がやりがいがありますか?

かさね』の60cm8本骨とか、『プレイド』長傘などが個人的にはやりがいあります。
折りたたみ傘ももちろん思い入れがありますけど、やっぱり長傘の方が傘らしいですよね。

でも実は折りたたみ傘の方が作るのが難しいです。

そうなんですか?

折りたたまれて仕上がった時に美しくて、しかも使いやすい折りたたみ傘を作るには、長傘よりも注意する点が多いです。
初めて折り目をつける時も、美しくて使いやすい折りたたみ傘にするために、かなり気を使いますね。
骨が自然に降りてくることも大事だし、長傘よりも張り具合が難しいですね。
小宮商店の折りたたみ傘はほとんどが2つ折の日本のクラシックなタイプなので、開いた時に骨がパラっと降りてくるように気をつけています。
今の一般的な折りたたみ傘は3つ折やトップレスが主流なので、お椀型で長傘のように綺麗な2つ折の傘は貴重になりつつありますよね。
なので2つ折の美しさを広めていきたいという気持ちもあります。
そういう意味で折りたたみ傘もやりがいがありますよね!

傘職人
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