洋傘のパーツ「天紙(てんがみ)」について
皆様こんにちは、加藤です。
普段は気に留めないような、隠れた傘の手仕事をご紹介するこのシリーズ。
早速ですが今日ご紹介する傘のパーツ第2回目はこちら。天紙(てんがみ)です。
第1回目は「陣笠」について紹介させていただいております。
詳しくはこちらをご覧ください。
天紙(てんがみ)について
※傘のパーツ名称についてはこちらをご確認ください。
「ドーン、ドーン」
地面に響き渡る大きな音。
きっと知らない方が聞いたら驚くかもしれませんが、昔と変わらぬこの音を聞くたび、私はいつも嬉しく、また懐かしく思うのです。
「今日も元気に職人さんが天紙を抜いているんだな」と。
傘を開いて内側から上を見上げてみてください。
天井部分の骨と傘カバー(縫い合わせた傘生地)の間にギザギザの形の布が挟まっていると思います。
これが「天紙(てんがみ)」です。
小宮商店では、傘カバーと同じ色柄の生地を使用しています。
単体でみると、こんなお花のような形です。
傘生地に抜き型をあててつくるので、クッキーのようですが、実際はかなり力のいる作業なんです。
天紙抜きは、歴代の職人さんたちから受け継いだ「切り株」の上で行います。
この台がまた使い込まれていて趣がありますよね。
他にも、ご利益がありそうな形の「木槌」。
スチールで出来た「抜き型」。
そして、抜き型を上から抑えるスタンプのような形の「支え木」。
これが天紙を抜く際の所謂【三種の神器】です。
そして忘れてならないのが「新聞紙」。
天紙の型を抜くときに、クッションのような役割を果たしてくれます。
これらを使って力いっぱい天紙を抜く作業中は、はじめに書いた通り、地面に響く大きな音が出るので、自宅で傘製作をしている職人さんたちは、天紙を抜きに出社したり、晴れた日にお庭で抜くようにしたりと、騒音対策のエピソードが出るほどです。
さて、「天紙」の役割についてですが、この小さな生地を挟むことで、骨に接する傘生地が摩擦によって痛まないように使用されています。
陣笠と菊座が傘の頭頂部を外側から保護する役割だとすると、天紙は傘を内側から守る役目とも言えます。
一見見逃しがちですが、ほとんどの傘に使用されている大切なパーツ「天紙」。
きっと皆様がお持ちの傘の内側も守ってくれているはずです。
ぜひチェックしてみてくださいね。