伝統にしていきたい。
美しいシルエットを生み出す木型
傘職人見習いの小林です。
こちらのブログでは初めまして、ですので、少し自己紹介させてください。
私には夫と2人の子供(中学生と、間もなく小学生)がいて、
傘職人修行を始める前はIT関連企業という職人の手仕事とは全く異なる業界で十数年働いていました。
紆余曲折(?)あり、傘職人を志すことに。
3年前の私に「あなた、3年後は会社辞めて傘職人修行してるよ。」と伝えたら、
「まさか!」と笑いとばすだろうな、というくらい意外で思い切った決断をしたな、と自分でも思います。
いや〜人生って不思議ですね。
私が傘職人を志した経緯については、また後日改めてお伝えするとして。
今日は「木型」について。
休日にコツコツと、
マイ木型を制作中
傘は、「駒」と呼ばれる二等辺三角形のパーツに生地を裁断して作成します。
ふわりとした立体的な丸みや骨の間の「谷落ち※」や「クリ※」を出すために、駒の二辺は滑らかな曲線になっています。
曲線をミリ単位で調節することで、職人は傘の形をコントロールしているんです。
この曲線を持った駒を均等に裁つために必要なのが、各職人お手製の木型。
というわけで木型は傘づくりの肝といっても過言ではありません。
この木型、師匠から作り方を教わってから、修行の合間の休日にコツコツと制作中です。
板はあえて曲がった物を選ぶのがポイント。
湾曲した素材を伏せるような状態で使うと、裁断する時に生地の上下をしっかりと押さえることができて、ズレにくくなるんです。
ホームセンターでわざわざそんな板ばかり選んでレジに持っていくと、レジを打っていた店員さんに、「相当曲がってるのばっかりだけど、ホントにこれでいいの?」と。
ですよね。 そう思いますよね。
「いいんです。 わざとです。」
誰の目から見ても曲がった板。 ムフ。 満足です。
傘は傘骨の本数分、駒が必要になります。
8本の骨の傘であれば8コマ裁断するわけです。
骨の数が多ければ多いほど、型の先端部分は鋭角になります。
先端部分、ノコギリで作成する角度に併せて板を切り落とし、カンナがけをした切断面を接着して作り出します。
最初はぴたりと綺麗に断面を合わせることが、なかなか出来なかったのですが、徐々にコツを掴めてきたような。
DIYは結構好きで、これまでも、いろいろ作ってみたりはしていたものの、板の切断などはホームセンターのカットサービスを活用していたため、ノコギリを握ったのは高校生の時以来。
カンナがけは人生初!
翌日から数日続く筋肉痛がつらい!!
でも形になった木型を見ると、一歩ずつ前進できるような気がして嬉しいです。
美しいシルエットの傘を生み出す
師匠のこだわりの木型
そしてこちらは菅澤師匠の木型たち。
数もさることながら、この色!
色の深さは経験の深さ。
こんな色に早く近づきたいです。
『ミラトーレ 70cm・8本骨』など菅澤師匠が作る美しいシルエットの傘はこの木型から生まれています。
ミラトーレのような、しっかりした生地を綺麗に張るのはとても難しいのですが、長年にわたり無数の木型を作り続けてきた師匠の傘は張りが綺麗で、開け閉めも滑らか。 使っていてとても気持ちが良い傘です。
私たちも師匠の木型をトレースし、その木型の曲線を受け継いています。
美しいシルエットを生み出す曲線は小宮商店の伝統として、大切にしていきたいです。
菅澤師匠が張った傘をぜひ一度手にとってご覧になってみてください。
小宮商店・東日本橋ショップなどでご覧になれます。
ミラトーレ 70cm 8本骨
東レ社の「ミラトーレ」という超撥水生地を使用した水弾きが抜群の、機能に特化した雨傘シリーズです。 70cm・8本骨は親骨と中棒がカーボン素材で、軽くて大きいメンズサイズ雨傘です。 ナチュラルで高級感のあるエゴの手元(持ち手)を組み合わせることで、大きくても軽くてスリムなシルエットになるおしゃれな長傘です。