小宮商店の傘づくり「陣笠について」
こんにちは。
今回のブログを担当させていただきます、販売スタッフの加藤と申します。
東日本橋ショップにいらしていただいたお客様とお話しをする中で「日本製の傘って、他とどこが違うんですか?」という質問を多くいただきます。
何万円もする傘と1000円の傘との違い。
「手作りということはわかるけど、どこが違うんだろう?そもそも傘ってどうやって作られているのだろう?」
そんな素朴な疑問にお答えすべく、これから不定期ではありますが、傘のパーツを題材に小宮商店の傘づくりについてご説明できればと思います。
宜しくお願いいたします。
第1回目は、長傘の先端についているこのパーツ。
陣笠(じんがさ)について
※傘のパーツ名称についてはこちらをご確認ください。
陣笠は、傘を差したときに長傘の先端部分『石突き(いしづき)』より雨が伝わり中に雨水が漏れるのを防ぐ目的で付いています。
昔、戦の際に下級兵が兜の代わりとして被った笠と形が似ていることから陣笠と名づけられました。
陣笠を取り付けるときは、傘生地が摩耗して傷ついてしまうのを防ぐ『菊座(きくざ)』と呼ばれるお花型の布を陣笠の下に敷き、『陣笠殺し(通称ジンコロ)』という道具を使ってかしめていきます。
この「かしめる」という表現から「シメる」→「殺す」となって「陣笠殺し」という名前になったようですが、名前の由来については諸説あるようです。
ちなみに小宮商店の職人が愛用しているジンコロは代々受け継がれてきたもの。
怖い名前の道具ですが、歴代の職人たちの想いがこもった、あたたかい道具です。
長傘にはいろんな太さの中棒(骨)がありますので、ジンコロも1種類ではありません。
そしてジンコロは、ホームセンターに売られているわけではなく、傘づくりに使用する工具も、その向こうにまた専門の職人がいます。
最後は陣笠を固定するために釘打ちを行います。
隙間のないようしっかりと留める必要があるため、熟練の技が必要な作業です。
通常はこれで陣笠の取り付けが完成となるのですが、実は小宮商店の傘は、他にも行なっていることがあります。
陣笠と菊座の間に『陣笠パッキン』と呼ばれる、防水パッキンを入れることで、更なる雨漏りの防止対策をしています。
日本製の傘にはJUPAという日本洋傘振興協議会が定める品質基準あり、より品質を向上する為のパーツの使用は各メーカーの基準に委ねられています。
このパッキンについても使用義務はないのですが、小宮商店では、よりお客様に安心して長く傘をご愛用いただくために、職人さんたちと話し合いながら、目に見えない部分にも工夫を凝らすようにしています。
昔と変わらぬ傘作りをベースに、新しい素材やパーツを取り入れ日々試行錯誤を重ね作られる日本製の傘。
もしお手元に小宮商店の日本製長傘がありましたら、そんな縁の下の力持ちな『陣笠』を見てみてくださいね。